最近では知名度が大幅に上がってきている「ぶらさがり許可」。
訪問介護事業所を運営されている方を中心にご質問やご相談が多い内容でもあります。
しかし、通常の介護タクシーとの違いや類似する制度との混同など、誤った理解や運営をされているケースも目立つのがこのぶらさがり許可でもあります。
そこで、これから取得を検討されている事業者の方、既に運営を開始している事業者の方に向けてぶらさがり許可について解説します。
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ぶらさがり許可について~自家用自動車による有償運送許可~
ぶらさがり許可とは、介護タクシー許可を受けていることを前提にこれに「ぶらさがって」取得することが可能な許可であるために呼ばれている俗称で、正式名称を「自家用自動車による有償運送許可」と言います。
一般論として自家用自動車(白ナンバーや黄ナンバー)の有償による運送行為は認められておりません。これは旅客運送事業(バス、タクシーなど)や貨物運送事業(トラック)に該当する運送事業であるためそれぞれ対象となる許可を受けることが前提だからです。
しかし、訪問介護などの現場では介護を必要とする高齢者などの通院や移動の支援が必須であり、運送行為が主たる目的ではない以上、これを運送事業とイコールにて考えることは現実的ではありません。
そこで、道路運送法の規定を根拠に一定の要件の元、訪問介護事業所などは自家用自動車による有償運送に許可を与えているのです。
(有償運送)
第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
中略
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
尚、この条文を根拠とし「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」に該当するとして許可を与えている別の有償運送許可(事故車のレッカー事業など)が存在するため、これと区別をする意味でも介護タクシー許可にぶらさがっている有償運送許可として俗称「ぶらさがり許可」と呼ばれているのです。
ぶらさがり許可を受けられる事業者
公共の福祉を確保するためやむを得ない場合として「訪問介護事業所等の自家用自動車による運送行為」が認められておりますが、この「訪問介護事業所等」に該当する事業は以下の2事業です。
- 介護保険法に基づく訪問介護事業
- 障害者総合支援法に基づく障害者居宅サービス事業(居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護)
このいずれかの事業を運営する組織が介護タクシー許可を受けた場合に、これにぶらさがる許可として取得することが可能となります。
訪問介護事業所又は障害者居宅サービス事業所の指定を受けた組織がこれに加えて介護タクシー許可を受けることで、ぶらさがり許可の申請要件を満たすこととなる。
福祉有償運送登録とは異なることにも注意
ぶらさがり許可と同様に自家用自動車を用いて有償運送を行う福祉有償運送登録(自家用有償旅客運送の中の一つの形態)というものがあります。
福祉有償運送登録も白ナンバー車両(自家用自動車)にて有償運送を行うという点で非常に類似するのですが、ぶらさがり許可は似て異なるものですので注意しましょう。
(有償運送)
第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
中略
二 市町村(特別区を含む。)、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送を行うとき。
ぶらさがり許可が道路運送法第78条第3項を根拠としているのに対し、福祉有償運送登録は同第78条第2項を根拠とする異なった制度です。
尚、福祉有償運送登録は株式会社や有限会社、合同会社などの営利法人では登録を受けることができません。
ぶらさがり許可と福祉有償運送登録は自家用自動車を使用した運送行為ではあるが全くの別物。
ぶらさがり許可を利用するお客様の範囲
ぶらさがり許可は、訪問介護事業所やヘルパー個人が所有する自家用自動車を設定し許可を受けることとなります。
しかし、非常に誤りが多い理解の一つとして、その利用客の範囲があります。
重大なペナルティーに繋がるものも含まれます。ぶらさがり許可を運用する際にはしっかりとした理解が必要です。
ぶらさがり許可は事業所サービスの利用者に限定される
許可を受けたからと言って誰でも乗せられるものではありません。
あくまでもぶらさがり車両による運送行為を利用できるお客様の範囲は、訪問介護事業所や障害者居宅サービス事業所の利用者に限定されます。
またこれらの利用者であっても訪問介護や障害者居宅サービスと一体となった運行でなければ利用できないことにも注意が必要です。
従って、普段から事業所を利用している利用者だからといって、通常のタクシー行為を行えるわけではありません。
ぶらさがり許可を取得することで介護タクシー車両が増えるわけではない。あくまでも訪問介護等との一体となったサービス提供の際にぶらさがり許可が有効となる。
ぶらさがり許可を管理する上での注意点
ぶらさがり許可は介護タクシー許可に紐づく運送行為であることには変わりません。
このため、運送事業者としての監理、監督は必須であり、これらを怠った場合には当然にペナルティーを受けることとなります。
ぶらさがり許可を受けている訪問介護事業所の方などからよくいただく質問を中心に、知っておくべきものなどをそれぞれ解説します。
ぶらさがり車両を運転するドライバーの運転免許
ぶらさがり許可に設定した車両により運送行為を行う場合、そのドライバーは事業所に所属するヘルパー(つまりはヘルパーとなることができる資格保有者)でありかつ、
- 第二種普通自動車運転免許(中型や大型も勿論OK)
- 道路運送法施行規則第五十一条の十六第一項第一号に規定されている国土交通大臣が認定する各種講習
のいずれかを保有もしくは受講済みの者でなければなりません。
尚、「2」は特例的な位置付けであり大原則は二種免許保有者であるです。積極的に二種免許の取得支援を行うなどといった意識は重要です。
道路運送法施行規則第五十一条の十六第一項第一号に規定されている国土交通大臣が認定する各種講習の受講修了者
一般的に「福祉有償運送運転者講習」と呼ばれる講習を受講される方が多いのですが、国土交通大臣が認定している講習であればその名称は不問です。
令和3年11月26日現在において国が公表している認定機関一覧を貼り付けておきますのでご確認ください。
ぶらさがり車両を運転することができるのは二種免許保有者又は認定講習受講修了者。
ぶらさがり車両も営業所に所属する管理車両数に含まれる
事業用ナンバーを着けた介護タクシーは1つの営業所に4台までは国家資格を保有した運行管理者を配置する必要がありません。
これはほとんどの皆様がご存じなのですが、この「4台まで」にぶらさがり車両も含まれますので注意しましょう。
ヘルパーの人数にもよりますが全てのヘルパーの車両を登録できるかと言えばそう簡単ではありません。
運行管理者の配置ができないのであれば介護タクシーとぶらさがり車両の合計は4台までとなる。
任意保険の加入が必須
ぶらさがり許可に設定し使用する自家用自動車によっては任意保険に加入していないものもあるかもしれません。
しかし、ぶらさがり車両として使用するためには、
- 対人8,000万円以上
- 対物200万円以上
- 搭乗者保険(人身傷害保険)※金額の指定はなし
の全てを満たした任意保険又は共済に加入していなければなりません。
会社などにて所有する自家用自動車は会社として加入すれば良いことですが、ヘルパーが個人的に所有している自家用自動車においては十分に注意し管理してください。
ぶらさがり車両は任意保険への加入が必須。特にヘルパーが個人的に所有して稼働している車両は要注意。
運賃について~介護運賃~
通常、介護タクシー許可を受ける際には同時もしくは運輸開始までに「ケア運賃」の認可を受けることとなります。
介護タクシー許可を受けた事業用自動車のみを運行に用いるのであれば旅行や墓参りなどの一般的な運行も、訪問介護サービスなどと一体的な運行の場合もケア運賃を適用することで差し支えありません。
しかし、ぶらさがり車両についてはタクシーメーターなどの設置がされていないことから別途、設定することとなる「介護運賃」を用いて運行することとなります。
まだ、介護運賃の認可を受けていない場合には早々に認可申請をしておきましょう。
ぶらさがり車両を用いた移送サービスでは介護運賃を用いることとなる。