レンタカー許可は株式会社や有限会社などの法人、フリーランスなどの個人事業主の方のどちらでも取得が可能な許可です。
既にレンタカー事業に関連するビジネスを展開されている場合には同一の事業体にて許可取得をされるケースが多いようですが、これらか新たに始める場合などにおいてはその判断に迷われる方も少なくないようです。
記事の冒頭にて綴ってしまうのもいかがとは思いますが、レンタカー許可においては法人で取るべきか個人で取るべきかの100点の答えはありません。
許可を取られる方の状況や今後の展開などを鑑みて決定することになるでしょうから、判断が難しいのも納得できます。
今回はあくまでも参考として、これまでの許可取得サポート実績から感じたことについて綴ってみたいと思います。
これから新たにレンタカービジネスを始める場合の選択
既存のビジネスが存在せずまっさらな状態から新規ビジネスとしてレンタカー事業を立ち上げるのであれば、いくつかの主要なポイントを押さえた上で、法人にするか個人にするかを判断されれば良いかと考えます。
その主要なポイントとして考えられるものは、
- 対外的な信用
- 事業にて生じる税金の節税
- スタッフの雇用の有無
それぞれを簡単にピックアップしてみます。
対外的な信用
やはり対外的な信用は法人の方が勝っています。
一人での経営であったとしても、簡単に変更できる看板(個人の屋号)を掲げて営業しているのと、正式に法務局への登記手続を行い、法人として公簿(登記簿)に登録された状態にて活動するのでは相手方からの見え方も大きく異なります。
事業規模の大きな会社などでは個人事業とは取引をしないことが決定されている場合もあり、予定する取引先次第では法人として開業しなくてはならないケースもあるでしょう。
事業にて生じる税金の節税
詳細を記載し始めると本当に長文となるとても奥の深い節税のお話ですが、一般論として売上規模が小さいうちは個人事業者の方が税金の負担は少なくて済みます。
あくまでも概算となりますが、年間の売上が2,000万円程度を初年度から上回るほどの計画があるのであればシュミレーションの上、法人によるスタートを選択することも検討されると良いのではないでしょうか。
これに満たない計画や、そもそも売上の目途も立っていないような状態であれば個人事業者としてのスタートが無難です。
スタッフ雇用の有無
開業当初からある程度の台数をレンタカーとして運用したい場合など、とても一人や夫婦だけでは賄えない場合には、スタッフを雇用することも検討するはずです。
しかし、近年においては慢性的にスタッフ雇用が難しい(募集をかけても集まらない)と言われており、特に社会保険制度への加入が無い事業者は人気がありません。
このため、スタッフありきの商売をされる場合においては、事業規模の大小などに関わらず法人を立ち上げ社会保険などの体裁を整えるケースが増えています。
もっとも、個人事業においても事業主を除いては社会保険に加入すること自体は不可能ではありませんので参考にしてみてください。
特段の理由がなければ個人事業からのスタートが無難
法人としてスタートするのか?個人事業主としてスタートするのか?
結局はこれまでの記事の内容などを参考にし最終的な決定をすることとなるものと思いますが、やはりまっさらな状態からのスタートの場合には、特別な事情が無い限りは個人事業としてこじんまりとスタートし、事業規模が大きくなった段階での法人なりがスタンダードであると考えます。
事業規模が小さいうちの法人経営は管理すべき内容も多く、経済的にも不利なように感じます。
当然、事業毎にそれぞれ計画が存在しますのでここで決めつけることはできませんが、最初から大きく風呂敷を広げないことも判断として誤ってはいないのではないでしょうか。
既存事業のサブビジネスとして始める場合の選択
次に既存事業のサブビジネスとしてレンタカー許可を取得したいとお考えの場合を想定してみます。
新たにレンタカー許可を取得されるケースにて本当に良くある事例として自動車修理店などにおける修理代車のレンタカー化があります。
事故による修理などの場合、修理中の期間に代車としてレンタカーを利用した場合にはレンタカー費用が保険会社より支給されることが多いようです。
今までは無料にて貸し出していた修理代車も、レンタカー許可を受け、法的に体裁を整えれば立派なレンタカービジネスであり思いもよらぬ収益があがるでしょう。
既存の施設などをそのまま利用できることから初期投資がいらないビジネスモデルとしてとても注目されるようになりました。
このケース、一般的には既存の事業体と同じ人格(法人なら法人、個人事業なら個人)にてレンタカー許可を取られることが一番望ましいと考えますが、とある理由から悩まれている方がいらっしゃるようです。
同一の会社だと保険請求が認められない??
時々、いただくお話でお悩みの種となっている内容として、事故車の修理を請負う会社とレンタカーを貸し出す会社が同一の場合には「レンタカー特約」が適用されずレンタカー費用が支給されないというもの。
これまで同様のお話のご相談を何度と受けたことがありますので、実際にそのような運用をしている保険会社があるのかもしれません。
しかしながら同一の法人にて許可取得サポートをさせていただき、問題なくレンタカービジネスを成功させている会社の方が圧倒的に多いことを考えるとそのような事実が本当に存在するのかとも疑問を持っています。
しかしながら、これまでの実務経験を踏まえた上での想像であり、数ある保険会社の運用の全てが全く一緒であるとも言い切れませんから、この辺りは契約予定の保険会社の担当者に確認していただくほかはありません。
その上で、決定されることが望ましいでしょう。
法人と個人は確定申告が別になることはしっかりと抑えよう
仮に既存事業を法人、新たに始めるレンタカー事業は個人事業としてスタートする場合、当然に個人と法人は別人格ですので確定申告が発生することには注意が必要です。
そしてレンタカー事業の売上規模次第では、個人事業税ほかの税金が法人に関する税金とは別に課されることとなりますから、このあたりはシミュレーションをした上で進めることが望ましいでしょう。
また、別の法人を立ち上げてレンタカー許可を受ける際にも既存法人とは別の会社となりますので、同様のことが言えます。
レンタカー許可を個人⇔法人間にて事業を承継する手続について
実はレンタカー許可においては個人から法人、またその逆である法人から個人への事業譲渡(事業承継)の手続を認めている管轄があります。
通常では個人と法人は完全なる別人格であるため、個人にて許可を受けている場合には、法人として許可を取り直さなくてはなりませんが、この方法を用いれば受けている許可をそのままスライドできますので非常に大きなメリットです。
現状、法人か個人かで悩まれている方にとっては目から鱗の情報ではないでしょうか?
ただし、この事業承継、気を付けていただきたいのは全ての管轄において認められているわけではないということ。
一定の時期までは概ね全国的に認められていたようですが、近年ではこれが崩壊しつつあります。
同じ法律を根拠に運用されているレンタカー許可ですが、許可権限が各都道府県に設置されている運輸支局長(兵庫と沖縄は呼称が異なる)のため若干の運用に差があるのです。
非常に不公平な話なのですが、この点は知っておく必要があります。
尚、この事業承継手続は許可をそのままスライドさせることができるだけではなく、審査期間(確認期間)が一週間程度と短く処理が完了すること、登録免許税が不要であるメリットもあります。
古物商許可との関連性にも確認が必要
関連記事である、レンタカーの開業には古物商許可が必要?にて詳細を記載しておりますが、レンタカービジネスを運営する上で古物商許可を同時に受けている必要があるケースがあります。
それはレンタカーとして登録する車両を中古車にて用意する場合です。
この場では古物商許可を管轄する法令の詳細は書きませんが、中古のものをレンタルビジネスに用いるために仕入れた際には古物商許可の制約を受けることになるのです。
意外とこのことはレンタカー許可申請をサービスとして提供している行政書士も知らないケースが多く、露見した場合には警察(公安委員会)よりペナルティを受けることとなってしまいますからくれぐれも気を付けてください。
そして、この古物商許可を必要とするケースにおいては当然にレンタカー許可と古物商許可を受けている人格(法人または個人)が同一でなければなりません。
法人の場合には事業目的にも注意
ここまで色々な注意事項や検討事項を説明して参りましたが、最後にもう一つ。
これは法人にてレンタカー許可を受ける場合に気を付けていただきたいこととなりますが定款に定められている事業目的にレンタカー事業に関連する定めがある必要があります。
詳細を確認されたい方は関連記事、レンタカー許可を法人で取得する際の事業目的をご覧ください!