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2022.11.13

建設業許可

建設業許可の基礎知識

決算書のない新設会社にて特定建設業許可を取得する

建設業許可には大きく分けて一般建設業許可、特定建設業許可の2種類に分かれます。

初めて建設業許可の取得にチャレンジされる会社や個人事業主の方においては概ね一般建設業許可を目指すことが多いでしょう。

従って、全く建設業許可を受けていない状態からいきなり特定建設業許可の取得となる会社はほんの一握りです。

しかし、既にそれなりの事業規模を誇る建設業者が戦略的に新規会社を立ち上げ、いきなり特定建設業許可を申請する機会を何度かお手伝いさせていただきました。

そこで今回は、一度も決算を迎えていない、要は決算書の提出ができない新設会社において、特定建設業許可は取れるのかについて解説したいと思います。

尚、既に決算を迎えている会社において資本金だけが要件を満たせない場合には先日公開した資本金を増資して特定建設業許可を取る!をご覧ください。

 

特定建設業許可を新設会社にて取得することは可能

まず結論を先に書きますが、新たに立ち上げた会社であっても特定建設業許可を受けること自体は可能です。

新設会社の場合、当然に直近の決算書というものがありませんが、全く問題なく許可申請もできますし、許可を受けることもできるのです。

しかし、この方法を取るためにはどのように審査されるのか??

実は国土交通省が出している「建設業許可事務ガイドライン」というものに、以下のような記述がされています。

2.財産的基礎について(建設業法第15条第3号)
中略
(6)この基準(要は財務要件(筆者補記))を満たしているかどうかの判断は、原則として既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表により、それぞれ行う。
以下略

引用:建設業許可事務ガイドライン(最終改正令和3年12月9日国不建第361号)

つまり、新設会社における決算状況の審査については設立時の財務諸表、具体的には設立時貸借対照表の数値を基に審査されることとなります。

これが何を意味するのか?

そう、新規会社にて特定建設業許可を取得したいのであれば、その設立方法には十分な知識と判断が必要となるのです。

 

特定建設業許可の財務要件を再確認

理解を深めるために特定建設業許可における財務要件を再確認します。

  1. 資本金が2,000万円以上であること
  2. 自己資本の額が4,000万円以上であること
  3. 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  4. 流動比率が75%以上であること

これらの4点が特定建設業許可を取得する上での財務要件です。

通常は許可申請を行う直近の決算書にて審査がされるわけですが、新設会社においては設立時の開始貸借対照表において審査を行います

従って、開始貸借対照表によりこれらの4点を全てクリアしていることが確認できれば特定建設業許可を受けることができるのです。

尚、新設会社においては上記の「1」と「2」の要件を満たすことで必然的に「3」や「4」の要件を満たすこととなります。

そこで「1」と「2」についてマーカーをしてみましたが、一つずつ見ていきます。

 

資本金が2,000万円以上であること

これは非常にシンプルに考えてください。

単に設立時の資本金を2,000万円以上に設定することでこの要件は満たすこととなります。

ただし、以下にて解説する自己資本の考え方によってはこの資本金の設定にも影響を及ぼす場合があるため、この点は注意しましょう。

 

自己資本の額が4,000万円以上であること

この判断は貸借対照表上の純資産の部の合計額によって判断されます。

純資産の部に記される資産としては前述の資本金や会社が利益を生むことで生じる利益剰余金などが該当しますが、新設会社においては利益剰余金が生じることはありません。

そうなると純資産の部の合計額、つまりは自己資本の額を4,000万円以上とするためには最初からの資本として用意するほかありません。

具体的には、

  1. 資本金を4,000万円以上の額面にて設立する
  2. 資本金を2,000万円以上かつ資本準備金を2,000万円以上にて設立する

などといった方法が考えられるでしょう。

 

資本金を4,000万円以上の額面にて設立する

資本金を4,000万円以上の額面とすることで資本金の要件も自己資本の要件も共に満たすこととなります。

一番、わかりやすく確実な方法でしょう。

 

資本金を2,000万円以上かつ資本準備金を2,000万円以上にて設立する

特定建設業許可を新設会社にて取得する場合には、資本金2,000万円の要件だけでは許可を受けることができません。

そこで資本金と同じく純資産の部に計上される資本準備金を活用し要件を満たす方法もあります。

資本金と資本準備金について会社法においては以下のとおり、定められています。

(資本金の額及び準備金の額)
第四百四十五条 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない
以下略

引用:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」

上記の会社法第445条第2項及び第3項に記載のとおり、資本準備金とは株主から払込を受けた資本相当額(要は資本金)のうち、資本金に計上をしなかった残額を言います。

要は、資本準備金=払込を受けた財産の額-資本金です。

この資本準備金は貸借対照表上の純資産の部に計上される科目であり、特定建設業許可の財務要件を確認する上での自己資本の額に影響を与えることとなります。

尚、会社法上にも記載がありますが、払い込まれた資本金の2分の1を超えない額としなくてはならないなど、法の理解が必須の方法でもあるため注意が必要です。

 

結局は4,000万円以上の資本が必要であるということ

これまでご覧いただいたとおり、新設会社にて特定建設業許可を目指すのであれば、結局は4,000万円と言う大きな資本額が必要です。

本記事の冒頭の部分に戻りますが、これから初めて建設業許可を取られるようなケースにおいては最初から特定建設業許可というのは考えにくいです。

従って、これから許可を取りたいとお考えの方にとってはあまり参考にならない記事かもしれませんが、将来、役に立つかもしれません。

ちなみに現物出資を用いた設立による特定建設業許可の財務要件を満たす方法もあるのですが、今回は全く検証していません。

また、改めて開設する機会を設けたいと思います。

 

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