建設業許可を取得するに当たり配置が必須となる専任技術者。
許可業種毎に定められた認定資格を保有している方であればこれをもって専任技術者への就任が可能ですが、そうでない場合には実務経験による就任が求められます。
実務経験による就任は非常にハードルが高く過去の記事、工業系高校or大学卒業で専任技術者の実務経験を短縮に記載のとおり、指定学科として認められている高校や大学を卒業している場合には随分と短縮されますが、通常は10年(120ヶ月)の実務経験を求められることとなります。
そしてこの実務経験ですが、建設業許可を受けていない会社での経験の場合、当然に建設業法に違反していない工事でなければなりません。
今回は建設業法に違反した工事を組み入れないと実務経験要件が満たせないケースを中心に解説してみます。
大前提として建設業法に違反した工事は実務経験として認められない
そもそもの大前提として許可を受けていない建設業者が500万円以上の工事を請負うこと自体が違法なわけですから、違法工事の経験を簡単に実務経験として認めてもらえると考えることは危険です。
建設業法における違反行為にはしっかりとペナルティも用意されており、実務経験証明書は実務経験の証明書類であると同時に違反を行った「証明」を自分でしているようなものですから、提出してしまってからの言い逃れは相当苦しいとお考えください。
従前に勤務していた会社より証明を受ける場合、その会社が建設業法違反を問われることにもなりかねません。
従って止む無く違反工事を記載した実務経験証明を提出する場合には事前の調整は必須であり、以下を参考にリスクを承知の上で臨むほかありません。
これまでの行政庁とのやりとりを基に弊法人による経験と見解を記述しますが、オフィシャルなものでないことは良くご理解ください。
違反工事については全く認めてもらえないケース
これは以前に群馬県知事許可を所管する窓口に口頭確認をした際の回答です。
群馬県知事における建設業許可申請においては、建設業法に違反した工事については実務経験として一切認めないと回答がありました。
これは請負金額によるものだけではなく建設業法全体にかかるものであり、また、電気工事業法や建設リサイクル法など請負金額に関係なく許可や登録を求めている他法令の制度に抵触している場合にも同様であるとのことです。
尚、これらを記述し提出した実務経験証明書に対してのペナルティについては回答はありませんでしたが、実務経験として認められていない以上、これらの書面の提出はリスクでしかありませんから良く検討する必要があります。
事情により認める可能性もあるがあくまでも個別案件毎に対応されるケース
こちらは埼玉県知事許可を所管する窓口に口頭確認をした際の回答です。ちなみに栃木県知事許可に関しても全く同様の回答を受けました。
当然ながら原則としては認めていないが、これを算入しないと許可を受けられないなどの事情がある場合には個別相談には対応しているようです。
ただし、許可申請を受理する前もしくは受理した後に県庁への登庁を求め違反工事の事実について資料を提示の上、詳細な説明は求めるとのお話でした。また、同時に指導を行うとのことでもあります。
その結果、事情を鑑みて実務経験として認めるか否かの判断をしているようですが、これに対するペナルティについては回答がありませんでした。
ただし、これに関して処分を行っている場合にはネガティブ情報として公開されるはずですが、弊法人にて確認する限りは見当たりません。(建設業法違反などにてペナルティを受けた会社は一定期間公開されることとなっています)
従って、これらの開示がされていないことを考えるとそもそもそのような工事を記載し許可申請を行う強者が皆無なのか、多少は穏便に済ませてくださっている証拠であると考えるのかは想像するほかありません。
請負金額に材料費を含むという考え方ゆえの建設業法違反
建設業法における一般建設業許可の請負金額の考え方として工事代金のみではなく資材等についても合算して許可の要否を判断しています。
このため実際の工事部分は数万円程度の規模であるにもかかわらず材料費が高額であるが故に許可の対象となってしまうこともあるのです。
ここからはあくまでも弊法人による推測ですが、このような悪質性が極めて低いものについては一定の指導などを行った上で実務経験として認めているのかもしれません。
但し、繰り返しますがあくまでも推測です。
やはり、止む無く違反工事を記載することとなる場合にはしっかりとした調整の上、臨みましょう。
考え方を変えることで実務経験を証明できることも
ご自身にて実務経験証明書類を準備されている方に多いのが、あまりにも視野が狭く勿体ないことをしているケースです。
当然ながら実務経験の証明に裏技があるわけではありません。
しかしその内容だったり記載方法であったり、意外と細かな部分を精査した上で作成することで実務経験として認めて貰えることも少なくありません。
あくまでも一つの例ですがキッチンや浴室のリフォーム工事を請負っている会社の方が許可を取得する場合には「管工事業」を取得することが多いかと思いますが、これらの工事にこだわり過ぎて実務経験が足らないとおっしゃる方も多いと感じます。
自社であれ他社であれ「管工事業」に該当する工事、例えば、上下水引込工事、浄化槽工事やエアコン工事などによる実務経験があるのであればこれを算入して経験を証明すれば良いのです。
また、実務経験での許可取得は諦めていた会社の方からのご依頼にて、通常では求められていない参考資料を敢えて添付し説明文を添えることで許可を取得した案件もありました。
違反工事があろうがなかろうが、これを肯定することはできませんが、私たちには守秘義務がありますからこれを外部に漏らすことはありませんしできません。
従って建設業許可の実務に長けた行政書士に一度、ご相談いただきたいものです。