請負金額が500万円未満の軽微な解体工事を請負う建設業者は、解体工事業者登録が必要ですが、建設業許可における「土木工事業」、「建築工事業」、「解体工事業」のいずれか許可を有している建設業者については解体工事業者登録は不要となり、登録を受けることなく解体工事を請負うことが可能となります。
ただ、登録が不要となるとは言っても建設業許可を受けた許可業種の内容によっては請負うことができない解体工事が存在することはあまり注目されていません。
せっかく法令に則り建設業許可を受けたにもかかわらず取得した許可の範囲を超越した違法工事とならぬよう注意が必要です。
尚、このページにおいては建物一棟を解体する解体工事にフォーカスし、記述をしたいと思います。
解体工事業者登録が必要な解体工事とはどのような工事なのか??そもそも解体工事の範囲とは??について確認をされたい方は、以前の記事、解体工事業者登録を必要とする解体工事とはを是非、ご覧ください。
建設業許可の建築工事業のみを取得しているケースを考える
繰り返しになりますが、建設業許可における建築工事業の許可業種を取得している建設業者は、解体工事を請負う際に改めて解体工事業者登録を行う必要はありません。
しかし、この内容を誤って捉えている建設業者も多く、建築工事業という許可業種にて請負うことができる解体工事の範囲については十分な理解が必要です。
今回は、建設業許可のうち建築工事業のみを取得した建設業者を想定し、これを前提とし話を進めて参ります。
まず、建築工事業を受けた建設業者が請負える解体工事の範囲は、
- 建築工事業に該当する解体工事(請負金額に上限なし)
- 各種専門工事に該当する解体工事(軽微な工事に限る)
の2点が考えられます。
それぞれ、見ていきましょう。
建築工事業に該当する解体工事(請負金額に上限なし)
国土交通省より出された建設業許可事務ガイドラインにおいて、解体工事の範囲について記載がされています。
(23)解体工事
それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当する。総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ『土木一式工事』や『建築一式工事』に該当する。引用:建設業許可事務ガイドライン(最終改正令和3年12月9日国不建第361号)
このガイドラインの後段の部分にて、「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を解体する工事は、『建築一式工事』に該当する」と記されております。
総合的な企画、指導、調整が必要となる建築物、つまりはビルやマンションなどの大型建物を解体する場合には、「建築工事業(建築一式工事)」として考えなさいよと言っています。
尚、一般住宅や小規模アパートなどの解体工事については総合的な企画、指導、調整が必要となる解体工事には該当せず、建設業許可における「解体工事業」に該当することとなりますので、軽微な工事を除いては「建築工事業」の許可では請負うことができません。
但し、新築建物を建設するために既存建物を解体する場合などは、「総合的な企画、指導、調整が必要となる建築物」の範囲と考えられますので、「建築工事業」として考えることになります。
各種専門工事に該当する解体工事(軽微な工事に限る)
通常、これらの各種専門工事に該当する解体工事を請負う場合には、解体工事業者登録が必要となりますが、この点が建築工事業の許可を受けることで不要となっております。
但し、建築工事業に該当しない解体工事については建設業許可を受けているわけではありませんから、軽微な工事に限定されます。
住居などの解体工事を単体にて請負う際には請負金額に制限が生じますので、注意しましょう。
住居解体を単体にて請負う場合には建築工事業ではないことに注意が必要
解体工事業者の方が建設業許可を受ける際に非常に誤りが多い項目でもありますので、よく理解されることをお勧めする内容です。
解体工事をメインにて請負う建設業者が建設業許可の取得を検討する場合、通常は「解体工事業」にて許可を受けることが大前提となるものと思います。
しかし、在籍する技術者の保有資格や実務経験が解体工事業を取得するには足りず、現在保有している資格の範囲にて「建築工事業」を取得し、解体工事業者登録が不要となっているケースを拝見することがあります。
このケースにて非常に多いのが、「建築工事業を取得することにより解体工事業者登録が不要=解体工事が制限なく請けられる」とお考えになられている方が多いことです。
これは違います。
解体工事業者登録が不要となっているのは、建築工事業にて許可を受けた際には登録が不要であることが規定されているだけであり、軽微な工事ではない解体工事を請負う場合には、建築工事業の許可のみでは足りません。
実務面においても工事経歴に振り分ける際、許可を受けた業種は個別に経歴書を作成し請負額の合算を計算しますが、許可を受けていない業種はその他の工事にまとめられ、この場合の解体工事もその他の工事にて計算され、建築工事業の工事経歴書に記載することはありません。
建築工事業にて建設業許可を受けた場合、解体工事業者登録が不要となるだけであり「建設業許可(解体工事業)」が不要となるわけではありませんので、違法工事とならぬよう注意してください。