複数の営業所を有する建設業者であれば、会社として有している許可業種の全てを全営業所にて取得することが理想です。
しかし、専任技術者は各営業所に常勤にて配置することが求められるため、在籍する資格者の人数によっては営業所毎に受けられる許可業種と受けられない許可業種が生じることはやむを得ないことです。
また、戦略的に営業所毎に許可業種を分けたい場合もあるようですが、そもそも営業所毎に許可業種を分けられるのかといったご相談をいただく機会もニッチではありますが存在します。
そこで今回は、営業所毎に許可業種を振り分けて許可を取得する点をピックアップして解説します。
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営業所ごとに許可業種を振り分けることは可能
前述したとおり営業所に配置する専任技術者の関係や、そもそも戦略的に許可業種を振り分けたいなどということもあるようですが、
- 営業所Aには二級建築士を専任技術者として配置し「建築工事業」を取得する
- 営業所Bには二級管工事施工管理技士を専任技術者として配置し「管工事業」を取得する
といったように営業所単位にて異なる許可業種を受けることは問題なく可能です。
このようなケースについてはそこまで多くは無いようですが、実際に、
- 営業所毎に土木部門と建築部門を分けているので許可業種もこれに合わせて取得したい
- 営業所の所在地毎に請け負っている工事が異なるため許可業種もこれに合わせて取得したい
などの理由から戦略的に許可業種を振り分けている建設業者もおられます。
営業所ごとに許可業種を振り分けることは可能!但し、技術者の管理には気を付けよう。
営業所を複数有する建設業者が知っておきたい点
異なる許可業種をそれぞれの営業所にて受けられることは戦略的な部分においても、専任技術者の不足の観点からもメリットでしょう。
これに加えて、複数の営業所に許可業種を振り分けることで生じる間接的なメリットも実は存在し、建設業法上のルールを理解する意味でも知っておいて損はありません。
前述にて、
- 営業所Aには二級建築士を専任技術者として配置し「建築工事業」を取得する
- 営業所Bには二級管工事施工管理技士を専任技術者として配置し「管工事業」を取得する
と別の場所に配置する2つの営業所にそれぞれ「建築工事業」と「電気工事業」を振り分けた場合を例示しました。
このケースにおいて営業所Bに配置されていた専任技術者を営業所Aに配置転換し、営業所Aにてまとめて2つの許可を受けた場合はどうなるのでしょうか。
つまりは、
- 営業所Aには二級建築士と二級管工事施工管理技士を専任技術者として配置し「建築工事業」と「管工事業」を取得する
- 営業所Bは専任技術者がいないため建設業許可における営業所としての届出は無し(営業は続ける)
というケースです。
この場合、金額の大小に関係なく営業所Bでは「建築工事業」と「管工事業」について請負契約を締結することができません。
軽微な工事を請負う場合には建設業許可は不要・・のはずだが
建設業法においては以下に示す軽微な工事に該当する建設工事を請負う場合には、許可は不要であると言っています。
- 建築一式工事については、工事1件あたりの請負金額が1,500万円未満の工事又は延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件あたりの請負金額が500万円未満の工事
確かに、例示した建設業者においても建設業許可を受ける前は営業所Aでも営業所Bでも軽微な工事の範囲において請負える許可業種に制限はありませんでした。
しかし、建設業許可を受けることで届出がされている営業所(要は許可業種を1つ以上持っている営業所)以外の営業所については会社として受けている許可業種を請負うことが一切できません。
従って、営業所Bにおいては軽微な工事に該当する場合でも、建築工事業と管工事業に関する請負契約を締結することができないのです。
これは見方を少し変えれば建設業許可を取得するデメリットとも言えるかもしれません。
これから許可を取得する方や、営業所を増やしたいと考えている建設業者の方々にとっては覚えておいて損はないのではないでしょうか。
建設業許可を受けていない営業所については許可を受けている営業所の許可業種を請負うことができない。
建設業法における営業所について
最後に建設業法上における営業所いついて、おさらいしておきましょう。
建設業法において「営業所」との文言は建設業の許可について定めた建設業法第3条に登場しますが、その詳細は記されておりません。
そこで営業所の概念について、国土交通省が発行した建設業許可ガイドラインの記載をベースに考えることとなります。
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。
引用:建設業許可事務ガイドライン(最終改正令和3年12月9日国不建第361号)
この内容をもう少しわかりやすくしてみると、
- 本店、支店、営業所などの名称に関係なく常時建設工事の請負契約を締結する事務所
- 本店や支店が常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合でも、建設業の営業に関与している場合には営業所として考える
従って、本店や支店は建設業に関わっていることで営業所としてカウントされるのに対し、それ以外の事務所は常時建設工事の請負契約を締結する事務所の場合に営業所と考えなくてはならないということです。