建設業許可には大きく分けて「一般」と「特定」の2種類があり、「特定」が上位許可に当たります。
しかし、建設業を営む会社に取って必ずしも上位許可である特定建設業許可が必要かと言えばそうではありません。
上位である特定建設業許可を受けておくことで一般建設業許可の範囲も賄えるといえば確かにそうですが、会社によっては思わぬところで足を引っ張られてしまう可能性のあるリスクを伴う取得ということもあり得ます。
そこで今回は、無理をして特定建設業許可を取得する際のリスクについて解説します。
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特定建設業許可とは
まずはおさらいをしておきますが特定建設業許可とは、請負金額の大小により求められるものではありません。
勘違いをされている方が非常に多い事項ですが、極端なことを言えば請負金額が100億円だったとしても一般建設業許可にて施工が可能な工事はあり得ます。
それではどのような場合に特定建設業許可が必要となるのかと言えば、
- 元請として請負う工事
- 協力会社等への下請負契約の総額が4,500万円(建築工事業は7,000万円)以上
これらの両方に該当する工事を請負う場合に特定建設業許可の取得が必須となるのです。
尚、これらの請負金額の考え方は今回の記事では割愛しますが、詳細をご覧になりたい方は以下の関連記事の文中に記述がございますので是非、ご確認ください。
特定建設業許可を取得する上で理解しておくべきリスク
特定建設業許可を取得するに当たっては非常に厳しい許可要件が設けられており、当然ながらこれらの全てをクリアしなければ許可を受けることはできません。
上位許可を意識しすぎるあまり、許可要件が整ったからとリスクを考えずに特定許可の取得を希望される方がおりますが、万一のリスクを理解した上で挑戦されることが良いのではないかと考えます。
私たちが考えるリスクとは次の2点です。
- 退職や死亡などにより専任技術者が不在となってしまう
- 経営状況の悪化などにより決算状況が基準を満たせなくなってしまう
特に「1」は即刻、許可要件に抵触する内容であり、十分に理解を深めておくべき内容です。
一つずつ詳細を解説していきます。
退職や死亡などにより専任技術者が不在となってしまう
一般や特定に関係なく営業所に常勤専従が求められる専任技術者。
この専任技術者が不在となった際には許可を失います。
中でも特定建設業許可においては一級相当の国家資格者が専任技術者となることが一般的であり、不在となったからと言って簡単に代役が立てられるほど甘くはありません。
一級相当の資格者がそもそも1名しか在籍していない場合など、万一の退職や死亡といった事象が生じてしまった際に対応が難しいと考えられるケースにおいては、本当に特定建設業許可が必要なのか否かについて良く検討する必要があるのではないかと考えます。
専任技術者の不在はその時点で許可を失効
繰り返しにはなりますが、専任技術者は建設業許可を維持する上で絶対のポジションであり一切の特例などがなく、専任技術者が不在となったその瞬間から許可を維持することはできません。
時と場合によっては会社の経営に大きな影響を与えることになろうであろう極めて重大な事象であることも合わせて理解しておきましょう。
特定建設業許可の専任技術者は原則として一級相当の資格保有者。簡単には代役が見つからないことを肝に銘じよう!
経営状況の悪化などにより決算状況が基準を満たせなくなってしまう
特定建設業許可においてはその経営状況についても審査項目とされており、設けられた基準を上回る決算内容となっていなければなりません。
この項目は絶対的な管理が難しく、現時点においては経営状況が良好な会社であっても一時的な借り入れなどによって基準を下回ってしまう可能性を秘めており、継続的なシミュレーションや対策を常時行い、意識を強めておくべき項目でもあります。
しかし、今回の開設においてリスクとして記載する内容は、そもそもが基準のギリギリにて特定建設業許可を取得しようと考えている場合です。
許可申請時点では確かに基準を満たしているものの、ちょっとした事象にて基準を割り込む可能性が高いような状況や、前期決算では基準を満たしているものの当期(現在進行している期)において基準を下回ることが濃厚となっている場合などにおいては、前述の専任技術者のケースと同様に本当に特定建設業許可が必要なのか否かを再考する必要があるものと考えます。
決算状況が基準を下回ってもすぐに許可を失効するわけではない
決算状況が基準のギリギリの場合など、特定建設業許可が本当に必要かの判断は前述のとおり行うべきでしょう。
しかし、専任技術者の場合と異なる点は基準を満たし無事に特定建設業許可を受けることができた場合、その後、基準を下回ってもすぐには許可を失効しない点です。
具体的には次の更新許可の際(厳密には更新許可申請の直近の決算)までに基準を満たせるよう回復していれば継続して特定許可を維持することが可能です。
経営状況に関する要件は基準を下回ったとしても次回の更新時までに回復していれば許可を維持することが可能。
専任技術者が不在となった場合に取るべき対応
専任技術者の退職や死亡などにより特定建設業許可の専任技術者となれる者が不在となった際に取るべき対応は次のいずれかです。
- 廃業届を提出する(建設業許可の廃止)
- 一般建設業許可を改めて取得する
「1」は本当に究極的な選択ですが、一般的には2級相当の資格者や実務経験を有する技術者をもって専任技術者を選任し「2」を選択されることが多いのではないでしょうか。
そこでここでは「2」についてもう少しだけ解説します。
一般建設業許可を改めて取得する
特定建設業許可にて求められる専任技術者が不在となった場合でも、一般建設業許可の専任技術者要件は満たせるケースは多いでしょう。
この場合には、すぐにでも一般建設業許可を改めて取得する手続を取るべきです。
しかし、特定建設業許可の要件を満たせなくなった日から一般建設業許可を取得する日までの期間は建設業許可を一切受けていない状態となりますのでくれぐれもご注意ください。
また、特定建設業許可と併行して一般建設業許可を他の業種にて取得していた場合を除いては、許可番号も変わってしまいますので覚えておきましょう。
特定建設業許可の要件を満たせなくなった日から一般建設業許可の取得までは無許可状態であることを忘れないで!
尚、埼玉県知事許可においてはこのような事象に対応ができるよう独自の制度として猶予を設けています。
特定建設業許可→一般建設業許可への移行に関することや、埼玉県知事許可における特例等についての詳細を別の記事にて記述していますので、是非ご覧になってください。
本当に特定建設業許可が必要なのかを見極めて判断しよう
これまでの解説のとおり、無理をして特定建設業許可を取得した場合、後の技術者の退職などにより許可を維持できなくなるリスクがあることがお分かりいただけたかと思います。
確かに特定建設業許可を取得することにより一定のステータスは誇示できるかと思います。
しかし、下請業者として工事を請負うことが100%である建設業者にとってはどんなに請負金額が大きくなろうと特定許可を取得する必要はありません。
必要に迫られて特定許可を取得する場合には止むを得ませんが「要件が満たせるようになったから取得しておこう」は状況を踏まえ今一度検討されてみてはいかがでしょうか。