介護タクシーを開業するに当たって営業が可能なエリアが存在することをご存知でしょうか。
介護タクシーを始めとする旅客自動車運送事業においては営業区域というものが設定されており、良くも悪くも意外とご存じない方も多いようです。
そこで営業区域に関する情報とその適用方法について今回は解説してみたいと思います。
介護タクシーの営業区域は営業所を構える都道府県内の全域
介護タクシー許可を受けた際には営業区域が指定されますが、これは営業所を構えた都道府県全域が指定されます。
つまりは営業所を構えた都道府県の全域にて営業活動を行うことが可能です。
しかし、この営業区域の適用方法を正しく理解していない方も少なからずおり、損をしているケースもあるようです。
営業区域の適用方法である片足方式とは
許可を受けた営業区域内全域が営業可能範囲であることは前述のとおりです。
しかし、運行方法によっては全国各地に向けた運行などが可能となっており、覚えておくことが得策です。
業界では片足方式などと呼ばれる内容ですが、要は営業区域内に発着地のいずれかが該当していれば、営業区域外に出ることを制限されません。
整理すると以下のようなイメージです。
- 営業区域 ⇒ 営業区域 ・・・ OK
- 営業区域 ⇒ 営業区域外 ・・・ OK
- 営業区域外 ⇒ 営業区域 ・・・ OK
- 営業区域外 ⇒ 営業区域外 ・・・ NG
これを知っておくことで運行範囲が広がりますから、しっかりと覚えておきましょう。
出発地又は目的地のどちらかが営業区域内であれば全国どこでも運行可能。
営業所が都道府県の境に存在する場合の注意点
営業区域が営業所を構える都道府県全域と自動的に設定されてしまうため、都道府県境に営業所を構える場合、道路を挟んだ反対側は営業区域外なんてこともありうるわけです。
しかしこの場合においても営業区域の考え方は変わりませんので注意が必要です。
営業区域外の両方を発着地とする運行を想定するのであれば営業区域を広げることを検討しましょう。
営業区域を広げたい場合の手続
営業区域外からの需要があり対応をしたいと考えている場合にはどうすればよいのでしょうか。
この場合には広げたいエリアに営業所を設置することで必然的に営業区域は広がります。
介護タクシーの場合、営業所毎の最低車両数は1両以上となるため、新たに設置する営業所に1台の介護タクシーとこれを運営するためのドライバーや運行管理責任者を配置することで問題なく営業所を増設することが可能です。
既に需要が見込めるのであれば決して高いハードルではありませんから、検討してみることも良いのではないでしょうか?
営業所に登録した介護タクシーはその営業区域に縛られる
営業区域を広げるために新たに営業所を設置した場合、その新たに設置した営業所を構える都道府県が新たに営業区域となります。
しかし、ここで注意したいのが営業区域は営業所毎に設定がされているのであり、会社全体として設定されているわけではありません。
- A県に構える営業所の営業区域はA県の全域
- B県に構える営業所の営業区域はB県の全域
といった考え方であり、上記の例でA県の営業所に配置された介護タクシーを「B県⇒B県」の運行をすることはできませんのでご注意ください。
営業所はそれぞれに営業区域が設定されるため所属する介護タクシーはその営業区域を遵守する必要がある。
同一都道府県内においても運賃設定は異なることがある
介護タクシーの営業所は複数の都道府県に設置することもできますし、同一の都道府県に設置することも何ら差し支えございません。
従って、1つの都道府県に複数の営業所を設置することも想定されますが、この場合にはいずれの営業所も営業区域は同じということになります。
但し、収受する運賃が同じとは限りません。
運賃については都道府県により2つ以上の運賃適用エリアに分割されていることがあり、この運賃適用エリア毎に運賃認可を受けることとなります。
どこの営業所に所属する介護タクシーかによって利用者は運賃が異なることとなりますので、予約時における説明は必須でしょう。
営業区域と運賃適用エリアは異なる場合があるため、同一都道府県内の営業所であっても運賃が異なる場合がある。
営業区域や適用方法を理解して適切な運営に努めましょう
最初は1ヶ所であった営業所も、事業の拡大や需要に応じて複数の営業所を設置することも出てくるでしょう。
営業所を増やすということは、車両は勿論ですが車庫や人員を配置することとなり、新規許可時と同様に調査業務や書類作成が伴うこととなります。
営業区域など旅客自動車運送事業の独特な考え方などを理解し、適切に努めていただきたいと考えます。