会社の寮から工場、空港から宿泊施設までなどの送迎に用いるための車両をレンタカーとして調達したいといった需要に応えるためのレンタカー許可取得案件が重なった時期がありました。
これ自体は一般的なレンタカービジネスですので何ら気にすることはありません。
しかしよくよく話を聞いてみると「将来的にはマイクロバスをレンタカー登録しドライバーも派遣したい」、「運転手付きでレンタカーを貸したい」などヒヤっとする内容がいくつもありました。
レンタカー許可は運転手付きでの貸渡を想定しておらず、あくまでも車両を貸し出す許可です。
そこで今回はレンタカービジネスにおいて運転手付きでのレンタカーの貸渡についての是非について解説したいと思います。
一般論として運転手付きのレンタカー貸し出しはできない
前述のとおり、レンタカー許可制度においてはあくまでも自家用自動車を有償にて貸渡すことを目的とした許可であり、運転手(労働者)をあわせて貸し出すことを想定していません。
国土交通省より出された通達(国自旅第138号及び234号)によれば、レンタカーの貸渡に際して運転者(労働者)の労務供給をしてはならないと謳っております。
そしてこの労務供給には運転者の紹介や斡旋を含むものとしており、労務の供給どころか情報の提供までも規制していることが現状であり、レンタカー車両の貸渡と同時並行的なドライバーの貸渡は禁じられているものと考えるのが自然ではないでしょうか。
運転手も一緒に貸し出すとなると旅客運送事業に該当か
ではなぜ、運転手をセットにて貸し出す行為が禁止されているのか?
これはタクシーや貸切バスなどを代表とする旅客運送事業の類似行為となる可能性があるからであり、また、労働者派遣法など関連する法令への抵触も危惧されています。
そして国が示している通達事項はこれらを防ぐために出されているもの。
これまでのものから判断するに、やはり運転手付きにてレンタカーを貸し出す行為は各種法令への抵触が考えられる行為であり、これを正当な生業として運営するためには、高度な法令判断や法解釈を持ちあわせ、不測の事態に陥った場合においてもその根拠を明確に示せるだけの力量が必要であると私たちは考えています。
運転手付きの自動車となればやはりタクシーやバスが連想され、レンタカー許可ではなく運送事業の許可を受けて運営するべきと考えるのが自然です。
しかしながらレンタカーを借りた会社側にて独自にドライバーを雇い入れ、その方が運転手として利用するのであれば何ら法に抵触する話でもなくなりますし、この辺りの判断は非常に難しくも感じます。
ここで言えることとしては、レンタカー事業者が表立って運転手付きレンタカーを広告し貸し出す行為は、その契約内容や形態に係わらず実態を持って判断するとした行政庁の考えをもって判断すれば法への抵触が高いと判断される可能性が高いと言えるのではないでしょうか。
最後に補足事項
これまで運転手付きのレンタカー貸し出しについて述べて参りましたが、あくまでも法令や公的な通達などをもととした私たちによる見解です。
従って、これらの行為が正しいのか誤っているのかといった判断をこの記事にて決定づけているものではありません。
なぜ、このような補足事項を記述するかと言えば、ネットを叩けば沢山の「運転手付きレンタカー」を貸し出している事業者のサイトが表示されます。
これらの事業者はそれぞれ自社の判断や、場合によっては顧問弁護士等の意見を交えた上で運営されていることでしょう。
これといった前例(裁判例など)が無い以上、様々な法解釈を独自に行い法令への抵触は無いと判断するのであれば、これを不可とする理由もありません。
私たちも今後、前例が発生した際にはそれに則った内容に書き換えたいと思っています。
今回の記事はあくまでも記事作成日現在における私たちの考えであり、法令を守り、行政機関と協力し法を運用するべき立場である私たちなりの判断であることを最後に補足事項として記述させていただきました。